ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
何?
バッチ?
それは、1センチ四方の小さなピンバッチ。
青い…蓮模様が見て取れる。
「こんな結滞な、しかも5つしかない"色つき"を簡単に捨てれるの、お前しかねーだろ。それになんだ、これ見よがしな菓子の残骸」
「でもそれ辿ってここに来れたんだろ、ワンワンは良い忠犬だよな、ホントに。あははははは~」
"動物にパン屑"
成るほど。
「で、何でお前がここに居る、
――氷皇(ひょうおう)」
煌が険しい表情を更に厳しくさせ、ぞくりとする程低い声で、ゆっくりと言い放つ。
そんな煌など、気にもしていないかのように、眉1つ動かず…むしろ愉快そうな笑みを浮かべて、青い男はいつもの調子を変えないんだ。
図太い"愚者"か。
或いは――
かなりの"強者"なのか。
判断出来る程、あたしはこの青い男のことを知らない。
「んー、乙女ロード探索の帰り、偶然芹霞ちゃんが血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に襲われていて」
「!!!」
シャツ越しに伝わる、櫂の汗ばんだ身体。
びくりと震えたのが判った。
「駄目じゃないか。俺が居なかったら、芹霞ちゃん殺られてたぞ、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に」
「……血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)?」
あたしは男に訊いた。
何だろう、その文字の響きに記憶がある。
「あれ、知らなかったの? 芹霞チャンを襲った相手。でも……なんだか、初めてってわけでもなさそうだね。珍しいね、普通人が何回も」
「でも昨日は煌が一緒で……」
「芹霞、答えるな」
櫂が射るような鋭い眼差しをして、あたしの言葉を遮った。
あたしを抱く片手に力が篭る。
「うわ、何、もしかして、俺もの凄く警戒されちゃってる?
だーかーらー。俺は偶然あそこで買い物してて、偶然芹霞ちゃんに会ったんだ。それで偶然俺の蹴りがいい具合に決まってさ。ね、芹霞ちゃん?」
やけに強調される"偶然"。
足1つでアレを抑え込んで…偶然?