ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「じゃあ、玲くんが一番強いの?」
「僕は昔、櫂に負けたよ?」
「は? じゃあ何? 櫂は自分の護衛よりも強いってことなの?」
「そういうことになるね」
「櫂……一体何者なのよ」
「芹霞、それ……今更だよ?」
玲くんは爆笑していた。
「今更かもしれないけど、櫂だけじゃなく……玲くん達だって、十分非凡じゃない」
「僕からすれば、そんな僕らと一緒に居られる、芹霞の方こそ非凡だよ?」
「……そう?」
褒められている……
のだろうか。
「有り難い存在だよ、君は。
僕らのような存在に、『人間』としての安定を与えてくれる」
「なんか……人間じゃない言い方だね」
「いつかきっと……
――…君も判るよ?」
意味ありげに笑う。
「こんなにつきあい長いのに、あたしが知らないこと……まだあるんだね。結構皆のこと、知ってると思ってたのにな」
知らない部分――
闇に隠された部分があることは、あたしにとって軽いショックだった。
人間なんだから、秘密の1つや2つあるだろうけれど、それでもあたしが知り得ない部分があるのは、やはり寂しい。
でもそれはきっと、今まであたしが自ら踏み込んでこなかった領域だ。
そして櫂が踏み込ませなかった領域。
そしてその境界が崩れると、
玲くんは言うのだろうか。
その時がきたら――
あたしはどうするのか。
櫂はどうするのか。
あたし達は、永遠の関係のままでいれるのだろうか。
そればかりが気になって仕方がない。