ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「やっぱり。その赤いのは血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を示している」
「…… 玲くん、今のそれ……」
玲くんが残ったソレの制服の残骸を手に取りながら、何でもない口調で言う。
「ああ、外気功? 外の空気を出来るだけ圧縮して一気に放つんだ。武芸の基本だよ」
何でもないように説明を受けると、本当に何でもないような気もしてくる。
「基本って……」
「基本だよ。これが出来なきゃ、警護団に入りたくても門前払いだ。だから桜も煌も、櫂さえも使える。個人差はあるだろうけどね。
……だけどあまり使うとね、体に負担かかるんだ。だから緊急の時以外は使ってはいけない規則になっている。僕だって、そう何度も連続しては出来ないよ。反動が大きいからね」
そう笑う玲くんの呼吸は、微かに乱れている。
やはり――
紫堂は謎に満ちている。
もうこれは、人間を超えている。
紫堂――恐るべし。
唯の財閥じゃなかったのか。
「昔はもっと身体が動いたけれど、やっぱりなまりすぎてるね。
方向変えしなきゃよかったな、桜にまだまだ負けたくはないけど」
その時、手にした弥生の携帯に着信音。
「……偽櫂からだわ」
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Title: さすが
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さすがは俺の惚れた女。
3時まであと少し。
楽しみにしてるよ。
紫堂櫂
-END-
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「……玲くんが倒したとかは判っていないんだ、この櫂は。
だけど3時って何? 確かあたし宛のメールにもそんな文面あったような気がするけど」
落ち着きを取り戻そうと深呼吸を繰り返す弥生が答える。
「プレイベントよ。格闘ゲームで有利になるものが開催されるみたい。プレだから予選なのかな。詳しくは知らない」
「……格闘ゲーム?」
玲くんが怪訝な顔をした。