ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
やはり標的は、弥生ちゃんだ。
薔薇の痣のある腕が、躊躇なく彼女に向けられる。
「きゃあああああ!!!」
僕は血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の手を素早く横から弾いた。
次いで、その懐に身を捩るようにして入り込み、拳を鳩尾に食らわしたまま床に押し倒すと、更に真上から強く叩き付ける。
メリ…と骨が砕かれた音がした。
同時に…ソレの口から、真紅色の液体が弧を描くように吐き出される。
汚液を避けながら、まだびくびくと元気よく跳ね続けるソレに、決定打を打ちこもうと、更に拳に力を入れた時――…
「玲様、また来たあああああ!!!」
弥生ちゃんの悲鳴。
もう1体…窓から飛び込んできたらしい。
「このお~ッ!!!」
芹霞が隣の本棚から大きな図鑑を取り出し、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の顔面を思い切り叩く。
バン、バン、バンッッ!!!
前歯と思われるものが飛び散り、芹霞が軽い悲鳴を上げた時、僕が床に打ち付けた血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が力を戻し、その爪が僕の頬を掠めた。
「歯っ欠けのくせに、弥生に触れるなッッ!!!
しつこいッッ!!!」
バン、バン、バンッッ!!!
芹霞が再び図鑑を手にして、
歯を失ったソレをぶん殴っている。
僕は、自分が相手にしている血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を窓に向けて背負い投げて外に落し、続いて芹霞が相手にしている血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の脊髄を肘で砕く。
のけぞるようにして咆吼を上げたが、戦意は衰えを見せず、僕はまた固い気を血色の薔薇の痣 (ブラッディ・ローズ)の頭に放つ。
それが崩れる破裂音がした時、あえてソレを見ようとしない芹霞が叫んだ。
「玲くんッ、下から音がする!!」
ソレの消滅を待たずして、階下からも猛々しい物音が響いてきたんだ。