ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
――あの女、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化するぞ?
あたしは思わず弥生が横たわるソファに駆け寄る。
弥生にはまだ意識は戻らない。
ありえない。
そうは思っているけれど、
それでも手に取り見てしまった弥生の腕は――
「血色の薔薇の痣 (ブラッディ・ローズ)!!!」
弥生がずっと掻いていた部分だ。
あたしは悔しさに目を瞑る。
「さて、どうする? その女、目覚めたらこいつらと同じく凶暴化するぜ!? 『白き稲妻』がそんなんだったら、お前1人で対処しなきゃなあ? 結界の中で助けたダチに殺される気分ってのは、どうだ!? それとも、あそこの塊みたいに共食い始めるのを待っているか!? ぎゃははははは!」
「あんたなら、助けられるの?」
あたしは訊いた。
「あんたなら、弥生を殺さないで、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化を止められるの?」
道化師は爆笑した。
「お前さ、俺は狩る者なんだぜ!?助けてどうするんだよ、ぎゃはははは!!」
「ただの狩人なら、あたしに条件なんか出さないでしょ。あたしが弥生を殺せないの知っていて、殺したくないの知っていて、助けるという意味、向け間違えたりしないでしょ」
道化師は、にやりとした笑いを作った。
「助けられる、と言ったら?
しかも『白き稲妻』もね」
それは…誘惑のように。