ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
そして…声が響いたんだ。
「へえ。少しはやるな。
――…BR002」
肌をざらついた舌で嘗め回されているような、不快感残る声音。
"BR002"
その単語に、煌はびくりと反応する。
どうやら煌のことらしいこと、煌自身…知っているらしい。
あたしはその意味する処を知らない。
声の主の輪郭が露になる。
片手にぐったりとしている制服の少女を抱き…
反対の手には――
血糊がついた鉤爪(かぎづめ)を。
しゃあああああ。
弱まるあの音は、少女の喉元から。
舞い散る真紅の飛沫は、さながら赤い華の花弁のように。
時間が止まったような…
残虐な光景。
目の前で…
少女の身体は――…
役目を終えて朽ちた骸のように…無残に放り捨てられたんだ。
ああ――
泣きたくなるくらいの、
神秘的な満月の光に照らされて。
目の前で起きているのは、
満月が見せた…邪(よこしま)な幻覚?