ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「芹霞、離れろぉぉぉぉッッ!!!」
煌の声と同時に――
「きゃああああッ」
力なくしたはずの少女が、
あたしの喉元目掛けて牙を剥いたのは。
先程、確かに死んだはずの少女は、裂けた首を奇怪な方向に傾かせながら、その虚ろで血走った眼であたしを獲物と捉えていたんだ。
ぎりぎりでかわせたのは、生存本能だったのかもしれない。
あたしはこちらに駆けつけた煌に必死にしがみ付き、四つん這いになって威嚇してくる、ソレを指さした。
「あれ、何?」
煌は厳しい顔をしたまま何も応えない。
「ねえ、あれ何よッ!!!?」
あたしが叫ぶのと、
ソレが動くのと、
煌が反射的に動くのが同時だった。
「!!!!?」
だが、それより速く動く者1人。
「ぎゃはははははは」
白服の金髪男が、実に愉快そうに笑いながら、右手に装着した鉤爪をソレの首元で真横に引いたんだ。
ソレの体は空高く跳ね上がる。
満月を背景に、2つに分離する首と体。
そして――
塵となって消滅した。
ソレは。