ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


俺は内心慌てる。

冗談じゃない。


何考え込む必要があるんだ。


「何しに来たんだよ、緋狭姉ッ!!」


煌が苛立ったような不機嫌顔で、叫ぶように割って入り、その話題を強制終了させた。


骨には異常はなかったらしい。


心なしか、緋狭さんと距離を取って胡坐をかいて座っている気がする。



多分――

気のせいではないのだろう。




「煌、お前を殺りに」




すっと細められたその目は。



冷たい――

攻撃的な目だった。



 
 
「!!!??」




煌の顔が恐怖にひきつった。





「冗談だ」


「はああああ!!!?」




緋狭さんは、冗談にも思えない程充分に凄んでから、やがて豪快に笑い出した。


誰もが彼女特有の笑えない冗談だと判っている中で、未だ初々しい反応を見せる煌は、いつも彼女が弄る1番の標的になる。


それだけ、可愛がられているのだろう。


彼女は一升瓶を手にとって口にすると、また、ぷはーと大きな息を吐いた。





「アオが来た」






「え?」




俺は思わず声を上げた。





「そう、あの氷皇だ。突然現れて、一方的にべらべら言い散らし、腹立たしい似非(えせ)笑いを繰り返し。

……そこで、私はアオと賭けをすることになった」


何が『そこで』なのか判らない。

というより、氷皇が何を言ったのかも判らない。


「私がアオに負けたら、全財産没収だ。あいつは私より稼いでいるくせに、私から更にふんだくろうとする極悪な奴だ。全没収となれば、私は働かないといけない。それだけはもう真っ平御免だ。私は一生分働いた」


そして真剣な眼差しを俺に向けた。



「賭けに勝たせろ、坊」



もう――

言葉が見つからない。



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