ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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東京都新宿区――。

東京の夜景が一望出来る、高級高層マンションの最上階。


何処(どこ)までも無駄に拡がる贅沢な空間に、何処までも無駄な装飾品を省いた…至って殺風景(シンプル)な室内の趣。


それは主の趣味以外の何ものでもない。



「――…で、

何でこんな状況になったんだ、煌」



何処までも深みのある、玲瓏な声が響く。


ある者はその声に畏怖し、

ある者はその声に心酔する。


静謐な響きの中にあるのは、

為政者特有の…強硬的な圧感。



「わ、悪い、櫂。

緋狭姉の影には…俺、勝てなかった」



少々項垂れ気味に…それでもあたしを詰るような恨めしげな褐色の瞳を、あたしに寄越す煌。


煌は実に不慣れな正座をしている。


鍛えている癖に、数分で痺れるらしく…むずむず動いている。

その横で、何故かあたしまで同様に。


あたし達の目の前には――

どっかりと…黒い革張りのソファに座り、長い手足を組んで、こちらを見下ろしている少年がいる。


艶やかな漆黒の髪。

憂いの含んだ切れ長の目。

通った鼻筋。

きりっと結ばれた口許。


その完璧過ぎる彫り深い顔の造作は、そこいらの俗めいた美少年とは余りに格が違う。


崇高(カリスマ)的為政者だけが持ちえる、凛然とした美貌だ。


どこまでも圧倒的な迫力に満ち、

どこまでも余裕の自信に溢れる王者のオーラを纏う男。


そしてそのオーラに見合うだけの確かな実力を兼ね備えた、此の世の奇跡の賜物。



我が自慢の幼馴染――


紫堂櫂(しどうかい)だ。

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