ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
その端正な顔が硬化している様は、焦眉の急を告げられているかのように剣呑で、本能的危機感が増してくる。
それじゃなくても、神々しい美貌というのは…僅かに顔を歪ませただけでも、十分鋭利な武器になるものだ。
加えて自然発動するその威圧感、存在感。
煌が本気で凄んでも、櫂には勝てない。
それだけの迫力要素が、櫂にはある。
それは煌自身も、よく判っているようだ。
あたしから言わせれば…
2人共、本当に17歳かと言いたい圧があるけれど。
まるで子犬のように縮こまる大きな煌から、此処に至る経緯を聞いた櫂は、目頭を指で押さえ…考え込み始めた。
暫(しば)しの沈黙が流れる。
まるで判決を待つ瞬間のように、極度に緊張して背筋を正し、櫂の反応を待つあたし達。
そして――
「まず1つ確認する。
お前達に怪我はないんだな?」
痛い程真っ直ぐな瞳を向けられて、あたしも煌もこくこくとただ頷いた。
そして響くは…大きな大きな溜息。
「良かった…。
芹霞の制服の血が…
お前達のものではなくて」
若干青ざめ強張っていた櫂の顔に、ようやく和らいだ笑みが浮かんだ。
それを見ていたあたし達もまた、安堵の息を漏らす。
整い過ぎた顔は、普段から表情は読み取りにくいものの、長い付き合いをしていれば自ずと判るもので。
櫂とは12年の長い幼馴染。
そして8年前から、煌が加わった。
櫂と煌の間には主従関係はあるけれど…基本、友情という絆で結ばれている。
一見、櫂も煌も…気安い空気は持たないけれど、そこは幼馴染。
他人には見せない、素の顔を見せ合う。