ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「天然鈍感女、相手か。同情するよ、あいつ。ぎゃははははは」
その意味は判らなかったけれど。
それでもこの男から、あの獰猛さは消えていたので安心する。
しかし。
「…… ねえ、男って、好きな人相手じゃなくても、シたいの?」
「あ?」
「いやあ、煌がさ、よく女物の香水つけて帰ってくるの。あたしはそれが嫌なんだけど、お姉ちゃんがね、それは仕方がないことだって言うの。男って、そんなもん?」
「ぎゃはははは。何だ、俺に下半身相談か」
「か、下半身……じゃなくてッ!! 皆に聞くとさ、"男"だから仕方が無いってやっぱり言うんだけれど、じゃあ皆はどうなのって聞くと、噴出したり無言貫いたりして、話逸らそうとするの。
これでも結構悩んだんだよ、あたし」
「それで俺に訊くのか、お前。絶対警戒心なさすぎ」
本当に愉快そうに笑っている。
警戒心がない――
かもしれないけど、何だかこの人、意外に真面目に答えてくれるから。
本当に意外すぎる人だから。
「お前は、ねえのかよ、男欲しい時」
「ないね」
「即答か。それはそれは幸せなお姫サマ。
……異性を欲しがるのは、満たされないからだ」
「満たされない?」
「そ。満たされないから何度もまた求める。刹那的なものだ。結局は堂々巡りのジレンマだ、ぎゃはははは」
「どうすれば満たされるの?」
何だか軽い自信喪失。
あいつは寂しいのだろうか。
何年も一緒に居たのに、あたしは、櫂は…あいつの寂しさを埋められなかったのか。
「俺に訊くな。まあ、俺から見れば、欲しい時に求められるあいつは……俺よりよっぽど…満たされているがな」
そう自嘲げに笑う男は、あまりにも儚なすぎて。
今にも消えそうに、壊れそうに…
硝子のような繊細さを見せて…目をそらしたから。
だからあたしは――