ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「天然鈍感女、相手か。同情するよ、あいつ。ぎゃははははは」


その意味は判らなかったけれど。


それでもこの男から、あの獰猛さは消えていたので安心する。


しかし。


「…… ねえ、男って、好きな人相手じゃなくても、シたいの?」


「あ?」


「いやあ、煌がさ、よく女物の香水つけて帰ってくるの。あたしはそれが嫌なんだけど、お姉ちゃんがね、それは仕方がないことだって言うの。男って、そんなもん?」


「ぎゃはははは。何だ、俺に下半身相談か」


「か、下半身……じゃなくてッ!! 皆に聞くとさ、"男"だから仕方が無いってやっぱり言うんだけれど、じゃあ皆はどうなのって聞くと、噴出したり無言貫いたりして、話逸らそうとするの。

これでも結構悩んだんだよ、あたし」


「それで俺に訊くのか、お前。絶対警戒心なさすぎ」


本当に愉快そうに笑っている。


警戒心がない――


かもしれないけど、何だかこの人、意外に真面目に答えてくれるから。

本当に意外すぎる人だから。



「お前は、ねえのかよ、男欲しい時」

「ないね」



「即答か。それはそれは幸せなお姫サマ。

……異性を欲しがるのは、満たされないからだ」


「満たされない?」


「そ。満たされないから何度もまた求める。刹那的なものだ。結局は堂々巡りのジレンマだ、ぎゃはははは」


「どうすれば満たされるの?」


何だか軽い自信喪失。


あいつは寂しいのだろうか。

何年も一緒に居たのに、あたしは、櫂は…あいつの寂しさを埋められなかったのか。


「俺に訊くな。まあ、俺から見れば、欲しい時に求められるあいつは……俺よりよっぽど…満たされているがな」


そう自嘲げに笑う男は、あまりにも儚なすぎて。

今にも消えそうに、壊れそうに…

硝子のような繊細さを見せて…目をそらしたから。



だからあたしは――


< 283 / 974 >

この作品をシェア

pagetop