ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「え……由香ちゃん!!?」
芹霞も卒倒しそうなくらい驚いている。
「芹霞、知り合いか?」
俺は訝しげにネコ娘を見る。
ネコ娘の背後には、大きなコンピュータが重い音をたてながら聳(そび)え並び、中央のディスプレイには数字が勝手に現れては消えている。
規模は小さいものの、玲と同じコンピュータ室だ。
「知り合いも何も……
桐夏の普通科D組の遠坂由香ちゃんよ」
そんな奴、いたっけか?
「由香ちゃん、こんな処でそんな……いや、恰好は別に良いの、噂も知ってるし。此処で何をしてるの?
先輩に拉致られたの?
それなら――」
一緒に逃げよう、と持ちかけているらしい。
「違うよ、神崎。此処にいるのはボクの意志。
会長がボクの腕を買ってくれて、色んな援助してくれているんだ。
今、ボクには神が降りているんだよ!!!」
ネコ娘はよく判らないことをほざいた。
しかも自慢げに。
「芹霞、こいつ頭変なのか?」
恰好からして。
そう耳元で囁いたら、
「ううん、これが由香ちゃん。アニオタゲーマー。至って普通よ」
更に小声でそう言われた。
新人類に違いねえ。
いや、妖怪か。
「神崎ー。ボク今ちょっと手が離せなくてね、もう少し待っててよー」
そう遠坂は苦笑し、ちらちらとディスプレイの流れる数字を気にしている。
「何してるの、ゲーム…とか?」
「ゲームといっちゃあ、ゲームなんだけどさ、ボクの作ったゲームに不正侵入してきた奴がいてね、中のデータごっそり抜き取ろうとするから、その撃退に一苦労……うわ、第3防衛(ガーディアン)プログラムも破られたッ!!!
嘘だろうッ!!!?」
そう叫ぶとネコ娘はがっくり項垂れ、
「第4防衛プログラム発動」
泣きそうな声でそう言うと、コンピュータは反応したように更にういーんと音をたてた。
言葉でコンピュータを動かすなど、玲そっくりだ。
まさか、こいつ――
玲と同じ側の人間なのか?