ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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「ねえ、櫂。何だか屋敷の中、静かだね。皆、大丈夫かなあ」


芹霞が心配げな瞳を向けてきた。


「簡単に参る奴らじゃないさ。きっと膿が出きったんだろう」


「だといいけど……先輩や蒼生はどうしたんだろ」


俺は足を止めた。


「芹霞。お前をここにつれてきたのは、御階堂本人だったのか?」


「うん。蒼生引き連れてね。どうしてもあたしが必要なんだって」


「………」


「先刻まで、あたしを守ろうと煌が対戦していたんだけれど、蒼生が強すぎて」


当然だ。氷皇は最強の男だ。


五皇は元老院の命に従うのが使命。


氷皇が御階堂と共に行動していても何ら不思議はない。


ただ気になるのは御階堂の指示。


あいつなら、芹霞以外の俺らの抹殺を命じてもいいはずなのだが。


「御階堂は煌を殺せとは命じなかったのか?」


「ん? 好きにしろって言ってたけど……そう言えば、『命令通り殺さないといけない』って言っていたような気がするな」


何故氷皇は命令を遂行しない?


「あの男は情け容赦ない。その中を抜け出れたのは、奇跡と言っても過言じゃない」


何故、氷皇は姿を現さないんだ?


もうとっくに、俺達が居ること知っているだろうに。



そう――

彼は知っているはず。



何故動かない?

 


「ねえ、櫂。そういえばお姉ちゃん、何処にいるの?」

 
不意の芹霞の言葉に、俺の脳裏に閃くものがあった。

氷皇が紅皇の気配を感じ取れないわけがない。

氷皇が表立った動きをしないのは、紅皇の牽制のためじゃないだろうか。



どこまでも緋狭さんは、先を読む。



「……櫂?」


重ねて芹霞が問うた時――





「アカなら、白き稲妻引き連れて、コンピュータ室破壊してるよ」




腕を組んで瓦礫の壁に身を凭れた、青い男が答えた。

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