ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


 
「!!!」



俺は思わず芹霞を後方に庇い、身構える。


それを僅かに目を細めて氷皇は見ていたが、やがて腕を解き、俺を見て笑ったんだ。


「あははは~。そんな怖い顔しないでよ。アカが居るのに君達に手出しするわけないでしょ?」



やはり――

紅皇の、緋狭さんの牽制か。



「アカ?」



芹霞が怪訝な顔をした。


「ん? 君のお姉さんは…「氷皇」


俺は氷皇の言葉を遮った。


正体の暴露を、緋狭さんは望んでいない。


彼女は、芹霞にとってただの姉であることを望んでいるのだから。


「御階堂はどうした」


「あははは。こんな血気盛んな少年達の来襲に耐えられるわけないでしょう。ちゃんと無事な処に避難させてきたよ。

勿論、彼はかなり渋っていたから強制送還ね」


あはははは、また氷皇は笑った。


「解せない。五皇がマスターたる元老院の意を反するなど」

「そう?」


「紫堂以上の絶対的忠誠がお前達五皇の勤めのはずだ。マスターが芹霞を望み、俺らの命を奪いたいのなら、どうしてそのように動かない? どうして放置しておく?」

「アカと賭けしてるんだ、俺」

「そんなものが枷になるお前ではない。こんな時期にするおかしな賭け自体、"必然"な事象なんだろう?」


俺は淡々と言い放つ。



「考えすぎだよー、


"偶然"だって」



氷皇が"偶然"を持ち出したと言うことは。



つまりは――


必然、


――ということか。




だとすれば、



「お前の"本当の"マスターの指示か」



俺は言った。


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