ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
遠のく意識。
沈み行く闇の底。
「……か」
ゆらゆら、ゆらゆら。
あたしは覚えがある。
あの赤い瞳に。
懐かしい、あの瞳に。
忘れないといけない、あの瞳に。
「……りか?」
ゆらゆら、ゆらゆら。
懐かしい闇に――
あたしは、還る…の?
「芹霞!!!?」
鳶色…。
真上から覗き込んでいるのは、鳶色の瞳。
「……玲くん?」
悲痛さに翳り、半ば泣き出しそうなくらい真剣に、必死にあたしを見つめる端麗な顔。
天井が見える。
よくあたしが鼻をぶつける天井だ。
「……ベンツ?」
あたしは紫堂特注ベンツの、後部座席に横になっていた。
息苦しい。
動悸が止まらない。
何これ…。
何で玲くんがいるんだろう?