ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
玲Side
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「え?」
芹霞が不思議そうな顔で僕を見つめている。
何が起きたのか、
どうして僕がいるのか、
まるで判らないという、そんな顔つきで。
僕は…直前までのことを思い出す。
あの時――
「玲、芹霞がおかしいッ!!!
早く、回復させろッ!!!」
煌と桜と共に、櫂の元に行き着けば。
ぐったりとしている芹霞を片手に抱え、櫂は苦戦しているようだった。
「芹霞、おい!!!?
どうしたんだ!!!?」
煌の…荒げた声が響く。
「制裁者(アリス)の瞳……
真紅の邪眼に揺さぶられたッ!!!」
煌と桜が櫂の補佐に入る。
「玲、芹霞を安全な場所で…即効回復させろ!!!」
悲鳴のような声だった。
僕は芹霞を櫂から引き取ると、丁寧に抱きかかえて、身を隠せる場所でその顔を覗いた。
会いたくて、会いたくて仕方が無かった少女。
表情をころころとよく変えるその顔は…
――血の気がなかった。
僕は慌ててその頬を叩く。
「芹霞!?」
――反応はなかった。
体温が異様に冷たい。
どくん、
不吉な予感に心臓が縮んだ。
芹霞の青い唇の上に手を翳した。
――呼吸をしていない。
僕から嫌な汗が滴り落ちる。
僕は、その胸に耳をあてた。
どうか、どうか――