ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

 玲Side
******************



「え?」


芹霞が不思議そうな顔で僕を見つめている。


何が起きたのか、

どうして僕がいるのか、


まるで判らないという、そんな顔つきで。



僕は…直前までのことを思い出す。


あの時――



「玲、芹霞がおかしいッ!!!

早く、回復させろッ!!!」



煌と桜と共に、櫂の元に行き着けば。


ぐったりとしている芹霞を片手に抱え、櫂は苦戦しているようだった。



「芹霞、おい!!!?

どうしたんだ!!!?」



煌の…荒げた声が響く。



「制裁者(アリス)の瞳……


真紅の邪眼に揺さぶられたッ!!!」



煌と桜が櫂の補佐に入る。



「玲、芹霞を安全な場所で…即効回復させろ!!!」


悲鳴のような声だった。



僕は芹霞を櫂から引き取ると、丁寧に抱きかかえて、身を隠せる場所でその顔を覗いた。


会いたくて、会いたくて仕方が無かった少女。


表情をころころとよく変えるその顔は…


――血の気がなかった。



僕は慌ててその頬を叩く。



「芹霞!?」



――反応はなかった。



体温が異様に冷たい。



どくん、


不吉な予感に心臓が縮んだ。




芹霞の青い唇の上に手を翳した。



――呼吸をしていない。



僕から嫌な汗が滴り落ちる。



僕は、その胸に耳をあてた。




どうか、どうか――



< 436 / 974 >

この作品をシェア

pagetop