ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
 


「芹霞――

俺を感じろ!!!」



突然櫂の声が響いた。



ああ、櫂が居る。


だからあたしは嬉しくなって、真紅色に背を向た。



櫂、櫂……何処にいるの?


その温もりを求めた。



ふわり、意識が上昇する。


真紅色が薄れていく。




反転。




「大丈夫か!?」




憂いの含んだ切れ長の目。

通った鼻筋。

きりっと結ばれた口許。



自慢の…美貌の幼馴染みが、蒼白な顔であたしを見ていた。

馬乗り状態であたしに覆い被さるように、あたしを抱きしめていた。



あたしの思考が状況に追いつかない。



ぼんっ。



布地越しの熱い肌を感じた途端、頭が沸騰する。



「芹霞?」



耳元で囁かれるその声に…

頭がくらくらする。



やばい、熱がまた上がってきたかも。


そう思ったら、ますます熱くなってきた。


顔、顔が――燃えそうだ!!



「ば、馬鹿。こんな時に意識するな。また、俺までつられてしまうだろうが!!」



慌てる理由も意味不明。

もうあたしは熱に混乱して。

力ない手足をばたばた動かした。



「暴れるなって。落ち着け、落ち着いてくれ」


櫂の方こそ落ち着け、というよりその体勢をまず何とかして。



「だから……ああ、くそッ」



櫂が――

あたしの耳に囓りついた。



びくんっ。




反射的に仰け反るようにして反応した身体は、そのまま固まって動きを止めた。



本当に一瞬だった。



な、何今の。



顔をゆっくり上げた櫂。

乱れた漆黒の髪が、櫂の頬に落ちる。



「俺だけにしろよ…その反応」


焦れたような漆黒の瞳。

何かを訴えたそうな、それでいて意地悪そうなその瞳。

若干、櫂の呼吸も乱れていて。



「煽りにいいだけ煽りやがって。俺の理性…なんだと思ってるんだよ。ああ…くそっ!!!」


そんな呟きが聞こえてきた。


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