ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
やはりこの方は、神がかり的に凄い。
未だ私は、気配を掴むことが出来ない。
突然過ぎる出現に、動揺したのは私だけではないらしい。
「緋狭姉~~ッッ!!
し、失恋って断定的に一体何だよ!!」
ただ、馬鹿蜜柑だけは別の意味でだが。
顔を赤く染め上げながら、本気で怒鳴っている。
…無駄なことを。
「ん? 何だ?
否定出来る進展でもあったのか?」
「……~~ッッッ!!!」
ほら。
墓穴、というものだ。
「玲、お前はどうだ?
失恋か、進展か」
微笑している玲様は、完全黙秘を貫くようだ。
だけど、緋狭様に判らぬはずはなく。
肉食獣のような含んだ笑いを持って、玲様に優しく語る。
「お前ほどの色香も、芹霞にかかれば無駄な垂れ流しに過ぎぬか。
だがな? 所詮女など、お前が本気で押し倒して、耳元で甘い言葉の1つでも囁けば……そうだな具体的にはな」
「………」
「緋狭姉ッ!!玲に余計なこと吹き込むんじゃねえッ!!! 玲もなんで熱心に耳傾けやがるッッ!!!」
馬鹿蜜柑が焦って、間に割り込んだ。
すると緋狭様は、さも愉快そうに…豪快に笑うと私を見た。
「よし桜、コップを3つもって来い。今回は私のおごりだ。辛気くさい、鬱陶しい顔を幾らかマシにさせてやる」
緋狭さんに逆らえる者など、此の世にはいない。
例えば未成年だからなどというモラルは、緋狭さんにとっては一番どうでもいいことらしい。
大体彼女は、日本酒を飲みながら盗んできたベンツを運転していたのだから。
片手で。