ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
銘酒『鬼殺し』。
緋狭様は自ら手酌で酒を注ぎ、
愉快そうな顔で、飲めと顎で促した。
仕方が無く…私も手に取り口に含んでみる。
「!!!!?」
舌も喉も食道も…火傷を通り越して、火事にでもなりそうだ。
こんなもの、人間が飲むものじゃ…。
「………!!!」
こっそり伺い見る馬鹿蜜柑と玲様は、至って平然とした顔で、水を飲んでいるかのようにこくこくと飲んでいる。
私以外は…飲めるのか!!!?
え、これを飲めてしまうのか!!!?
「おお、お前達もいける口だな。今日は無礼講だ。さあ飲め飲め」
緋狭様は非常に上機嫌だ。
注がれるまま、早いペースで飲み干す煌は、次第に…泣いたり笑ったり。
「仲直り出来たんだから、俺だってもっとべったべったしてえのにさあ~。熱出した時もよお~、思い切り心配していたのによお~、30分だぜえ~? 2人きりで密室30分~。ああ、もう35分過ぎた~。ひっでえ~」
抱きつかれた玲様は、白肌をほんのり朱に染めて、笑顔で煌の背中を摩っている。
「だけどお前はあっちでずっと2人きりだったじゃないか。何だよ、無線機の時だって2人だけの世界に入ってさ」
「入った処で、あいつ……鈍感過ぎてよ~」
「僕が必死になっている間、何かあったんだ?」
「ただのぎゅうだけ。……あ、もう1つ。あいつさ、俺が死んだら一緒に死ぬって……うっ、鳩尾に不意打ちで拳って酷くねえか、玲ッッ!!」
「ごめーん、あまりに嬉しそうだったからつい」
「何がついだよ。そういう玲だって宮原ん家からいちゃついて歩いてたじゃねえか。その横で縁切られてた俺なんか気づかずによお~」
「介抱程度で嫉妬するなら、この先どうするんだよ」
「この先……って、お前なんか仕掛けるつもりなのかよ!?」
「……ん、どうしようかな…」
「はあああ!!? お前、櫂が…」
「もう櫂にばれちゃったし」
「俺だって同じだろうが。
う、裏切り者~ッッッ!!!」
「あははははは」
玲様は笑い上戸らしい。
普段あり得ないような、大爆笑姿を披露している。
緋狭さんは、玲様が用意した真新しい山海漬を食べながら、やはり同調するように豪快に笑い出し、私はそんな呑兵衛の宴会を冷めた目で見つめていた。
その時だった。
「……何してる?」
櫂様が、不審者を見る眼差しで立っていた。