ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
別に陽斗の理解者になるつもりはねえ。
俺だって…大体、芹霞を奪われる前までは、俺を翻弄する陽斗が忌々しくて仕方が無かったし。
陽斗に対する目が変わってきたのは、別に緋狭姉から"解除"され、俺の速度が陽斗に勝ったから…とかいうもんでもなく。
いつもの余裕なく何やら消沈して傷ついている陽斗に、それじゃなくても不埒な真似やらかそうとした陽斗に激高していた俺とでは、戦闘に対する心構えは全然違うから。
そんな中で陽斗に勝った処で何だというよ?
勿論、勝者として敗者を哀れんだわけでもねえ。
恐らくは――
"オリジナル"。
既にその言葉で、俺は陽斗に対する"闇"を、感付いてしまっていたのかも知れねえ。
俺自身、無意識でも"救済"を求めていたあの頃。
芹霞や緋狭姉、それから櫂を初めとした紫堂の面々と関わり合う内、反発したりするのがえらく億劫で――疲れてしまっていたから。
陽斗程の憎悪があったわけでもねえし、陽斗程紫堂に固執していたわけでもねえ。
俺に、"実験体"としての記憶は、陽斗程明瞭に残っていたわけでもねえから。
だけど、何食わぬ顔で生きている他の奴らを見て、苛立っていたのは確かだ。
僻(ひが)んでいたのは事実だ。
だけど――
"もういいや"。
桜に言わせれば、『単純馬鹿』なんだろうけど、少なくとも神崎家のポジティブシンキングな考えは、ネガティブに考えれば考えるほど、それが馬鹿馬鹿しく思えてきて。
深刻に考えても、馬鹿な俺はどうすることもできねえし。
解決出来る頭があるわけでもねえし。
考えると"苦しくなる"ことに気づけば、それが鉛のように重く心にのし掛かって、ますます辛くて仕方が無くなった。