ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「あ、れ、玲。これはその芹霞が……」

「腕、良くなった途端にそれか?」


僕は瞬時に煌の元に移動し、

粉砕していたはずの煌の左手をくいと捻った。


「いっでえええええッッッ!!!」


煌の腕から逃れた芹霞は、途端に壁に背を向けて座り込んでいる陽斗へ身を乗り出し、その首に細い両手を回すと、ぎゅうううっと力を入れて抱擁し始めたんだ。


「!!!?」


陽斗は当惑したような顔をしたまま、動かない。



僕は――

呆然とした。


何だ、この図は?


「だから~ッッッ!!!

止めるならあっちッッ!!!」


煌が真っ赤な顔で憤って、抱き合う2人を指差した。


あっちって……。

だから、あっちは何だよ!!?

 

その時、風が横切った。


「抱きつく相手が違うだろうが!!」


深みのある透明な声。


櫂が芹霞を引きはがし、その胸の中に芹霞を抱く。


まるで、その位置にあるのが当然というように、颯爽と。


ずきん、と僕の胸が痛む。


発作にもよく似た痛み。

だけど、発作じゃない。


感情を伴うこの痛みは、

息が出来ないほど苦しいこの胸は、

目の前の情景が原因だ。


きつい。


櫂との組み合わせは、ダメージが大きすぎて。

僕を気圧する、その存在感の大きさを思い知らされて。

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