ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



元はと言えばあんたが元凶でしょうがッッ!!



「だから……首絞めるなよ、お前ッッ!!」


陽斗があたしの指を解くにはそう時間はかからず。


「……動じない処か、

ちゃっかりしてやがるよ」


半ば呆れるようなぼそぼそという呟きは、あたしには届かない。


「俺さ……」


突然…緊張感漂わせた低い声が響いた。



「お前になら…

切り捨てられてもいいぜ?」


突然、何?

切り捨てる?



苦しげにも見える真摯な表情。



「だけど……償いてえんだよ」


償う?


あたしは顔を顰めた。


「恨んでるだろ、俺のこと。

お前のこと騙して紫堂櫂から引き離した上に、結果声まで奪って。


だから――」


ああ、声が出ないというのは不便だ。


あたしは陽斗の腕を力一杯掴むと、居間の片隅にある電話の処まで連れていった。


「な、何だよ…」


うん、やはりある。紙とペン。


玲くんはそういう細かい処まで気が回る人だから。


あたしは紙にさらさらと字を書いて、陽斗に見せつける。




"卑屈すぎっっっ!!!"





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