ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「………」

「………」


「………」

「………」


「………」

「………」



ぽかっ。



「いてえな、何で殴るんだよ!!!」


ぽちぽちぽち…。


あたしは陽斗に、文字を打込んだ携帯を見せる。


"なんでむっつりしてるのよ、寂しいじゃないの!!"


「俺だって色々考えることはあるんだ!!!」



ぽちぽちぽち…。


"どれどれ、芹霞さんに相談してみなさい"


手でパンと、反らした胸をはたいた。



「………」

「………」


「………」

「………」


「………」

「………」



ぽかっ。


「だから、何で殴るんだよ!!!」


"その哀れんだ目が気に食わない!!"


金色の瞳は、苛立たしげに細められた。



「ああ、もう…。

俺、ちょっと行ってくるから、お前は大人しく此処で待っていろ」



突然、すくりと立上がる陽斗。


寂しく、思った。


何だか…皆に突き放された気がしたんだ。


助けを求める声も、考えられる頭もないんだから、何もしないでじっとしているしかないのだと…そう思われているような気がして。


あたしだって何かが出来るはずだ。


喋れなくても、頭悪くても。


動ける体があるんだから、何かをしたい。


あたしを…お荷物に考えるな!!!


あたしは、陽斗の服を掴んで――


ぽちぽちぽち…。


"喋れないあたしを見捨てるんだ"


よよよ、と泣くフリをした。


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