ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「お前なあ~ッッッ!!

ここの方が安全だと思ったからッッ!!」



"見捨てて1人で行っちゃうんだ"



「――…!!!!」



"ひどい、ひどすぎる!!!

あたしを孤独死させるんだ"


泣き真似全開で、ちらりと陽斗を窺い見ると。


「ああああ、判った!!!

護ってやるからお前もついてこいッッ!!」


何だか偉そうに言った。


護ってやるという単語に、些かカチンときている時に、


「……ま、時間ないから、その方がいいんだけどさ。どうしようか…考えている時間が無駄だった」


そう思っているなら、早くせんかッッ!!


ぽかぽかっ!!!


熱出した体は、まだ怠いのに。


「じゃあ殴るな!!!」


聞こえませ~ん。



そして―――。


 
陽斗に連れられた場所は、

墓場の下に在るあの研究所だった。


そこに至るまでが大変だった。


先に行き先を聞いていたから、お守り代わりに酔い止め薬を飲んで準備万端だったのに、今回陽斗はあたしを俵担ぎにせず、最初からお姫様だっこで移動した。


勿論ぞんざいな俵担ぎも好きじゃない。


だが、祭りで混雑しているだろう交通網を思えば――

確かに、軽やかに駆け抜ける陽斗の方が絶対早いだろうし、そこはあたしも納得して渋々譲歩したというのに。


よりによって、あたしの意識がしっかりしている中で、お姫様だっこで白昼の元に曝されるなんて。


そんな恥ずかしいことはやめろと訴えたのだが、声を失ったあたしの抵抗は無に等しく、無論携帯に書かれた文字などまるで無視され、叩こうがひっかこうが効果は全然ない。


暴れれば暴れる程、意地悪な笑いを浮かべた陽斗は、あたしから手を離してわざと落っことそうとするので、慌ててその首根に手を回してしがみつけば、


――あいつらが見たら、怒り狂うだろうな。


とぎゃはぎゃは笑った。


一方的すぎる攻防戦に負けじと抵抗している間に、目的地についてしまったんだ。

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