ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



付着した"べたべた"が気になったけれど、ものの数分で…乾いて、何も判らなくなってしまった。


不思議だ。


あのべたつき感が何もない。

髪だって…さらさらのまま。


不思議すぎる。



"ねえ、陽斗。あたしの声が出ないことにどんな意味があるの?"


だけど陽斗は頭を横に振った。


「それは判らねえ。あの女の考えだけは俺は判らねえ」


そういうと、整った顔を歪ませた。


「云いように利用され、酷く偏った断片的な知識しか与えられてねえことは、初めから判ってるがよ、ただあの女は読めねえ。

気を抜けば飲み込まれる。そんな存在だ」


ぞくり、とした。


陽斗にそこまで言わせる彼女――藤姫。


――ごきげんよう。


やはりあの得体の知れない少女は、藤姫に違いない。


あたしの声は何に関係しているのか。
  

「とりあえずよ、先刻…此処に残っている薬探して、効果ありそうなものを取ってきたんだけどよ」


掌には数種の錠剤。

そして水。


「免疫促進剤、粘膜緩和剤、細胞活性剤……ないよりはましだろよ。毒ではないのは俺も身体で判っているから、まず飲んでみろ」


あたしは頷いて薬を口に入れた。


すごく不味かった。

飲んで後悔する程だ。


かなり酷い顔をしたのか、様子を見ていた陽斗がぎゃはぎゃは笑った。



「さてと、芹霞ちゃん。回復を促進するために一旦結界に戻るか」


普通に頷こうとしたあたしは、動きを止める。


ふと――

思ってしまったんだ。


そしたらうずうずしてしまった。



"少しだけでいいから、都心のお祭り行きたい"



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