ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「――で、どうだ?声」
声を出してみる。
言葉は出ない。
――でも。
微かな、何かを感じた。
"手ごたえあったかも!?"
携帯に打ち込んで陽斗に見せると、
「よかった。時間の問題だな、後は」
本当に嬉しそうに笑いながら、あたしの髪を手櫛で梳いてくれた。
白服を脱げば――
確かに洋服は濡れていない。
陽斗はまだゼリー状の名残があるその服を着てしまった。
「お前さ、香水でもつけてたっけ?」
突然陽斗が聞いた。
あたしは首を横に振る。
「だよな。だとしたら……
お前の匂いか。随分甘えな」
どうしたんだろう、陽斗くんが色ぼけしてる。
ピンクに染められて、何だか顔が弛んでいる。
やはりあの水槽はヤバイものだったんじゃないだろうか。
陽斗は濡れたタオルを差し出した。
「水槽潜った時、濡らした。
効果あるのなら、首に巻いておけ」
あたしが溺れている最中に、なんと冷静なこと。
文句の1つでも言いたい心地だったけれど、あたしはそれをありがたく頂戴し、首に巻くことにした。
タオルに、微かなカビが見えたような気がしたけれど……見てなかったことにしておこう。