ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「お招き頂き――
光栄でございます」
侮蔑の眼差しを撥ね付け、
凛とした眼差しを向ける櫂様は。
たった1人で11人分の視線を受け止め、いつでも泰然として揺るぎなく。
追従するような慇懃さを見せながらも、自らの存在を誇示する。
それは、紫堂櫂という覇者が持つ、無意識に発動される…オーラ。
それが気に食わなかったのか、男は櫂様の斜め後ろに、控え目に立つ玲様に目を止めると、いやらしく笑った。
肉食動物に…変貌する。
くつくつ、
「白き稲妻。お会いするのは三度目かね。一度目は、紫堂現当主より、君が紫堂の次期当主だと紹介を受けた時。あの時の君が、まさかそんな場所に立つまで落ちぶれるとはね」
くつくつ。
その言葉で如何ほどの傷を玲様に与えるのか。
判っていながら最悪の言葉ばかりを紡ぐ男の挑発に、玲様は感情を押し殺したような顔に、無理矢理いつもの…少し寂しげな微笑を乗せた。
玲様も判っているのだ。
御子神祭主事の変更が明確に伝達されていない以上、下手に私情で反応して、それで元老院の機嫌を損ねたという、理不尽な後付けの理由を与えぬ為に。
だからこそ、玲様は堪えている。
全ては紫堂の――
いや、櫂様の為に。