ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
 

表の顔だけは実に多種多彩だ。

肩書きだけなら1人10は下らない。


けれどその素顔は隠されたまま。


表の名前など仮称だ。

表の顔は、世を欺くための仮面。


玲様の情報網をもってしても、真実の姿は掴めない。


その後ろに控えるのは、

色違いの外套を纏った、4人の長身の男。


その襟に留めているのは…

外套の色をした小さな蓮のバッチ。


黒色、白色、緑色……、

鮮やかな赤色はなく。


残る色は――



居ない。


"青色"が居ない。



そして――

12人目の元老院、御階堂も居ない。


それに気づいたのだろう、玲様は僅かに眉を動かした。


「これはこれは、紫堂の。よく参られた」


嗄れた声音の…温和そうな男が愛想良く立ち上がった。


齢70歳は超えているだろう。


表の世界では社会福祉の貢献者として名高いが、優しげな笑みの中の相反する加虐的な色を、表の世界で見抜ける者は誰もいない。


邪に突き刺してくるような、一方的な威圧。

元老院が持つ、絶対的為政者としての溢れる自信。


そして紫堂への、櫂様への…

"格下の者"への完全なる蔑視。


人間として見る目ではない。


完全に――道具、玩具だ。


『気高き獅子』として誰もに畏怖される櫂様の存在とて、この男……いや、元老院全体には脅威ではない。

元老院は、それ程までの権威集団だ。




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