ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「格闘パートがまた難しいの。あの由香りんでさえ、まだクリア出来ないみたいね。……そういえば彼女、ここ最近かなり休んでるけど息災かしら?」

少し考え込むような素振りを見せた後、弥生は視線をあたしの携帯に向けた。


「……ね、ところで芹霞。私そのカードの主がどこまで進んでいるか気になるんだけど、その画面のさ、『続きから』ボタン押していい?」


「ん、いいよ。

―――…。

……あれ? 

読み込みに失敗したって……」


"保存データがERRORです。

現在情報を再取得しますか"


「弥生、どうする?」

「さあ? とりあえず『はい』じゃない?」


"プロフィールを設定して下さい"


「最低限の設定項目、勝手に入れるわよ。

氏名『神崎芹霞』、出身地『東京都世田谷区』、性別『女』、年齢『17』、誕生日『7月20日』……」


「何かプライバシーの侵害だね」


「でも設定すれば、より自分好みになるというか、例えば誕生日。星占いの観点から、攻略キャラの言動が自分の好みのものになるんだって。やるなら、徹底的にやろうよ、芹霞」


もう好きにやってくれ。

面倒な設定なんて、あたしはしたくないし。


「……最後に携帯メアド登録と。これで攻略キャラからキャラメール届くようになるわ」

「キャラメール?」

「そ。メルマガとは別のね。ふふふ。赤面ものの熱烈な愛の言葉、贈ってくれるわよ。まあ、芹霞のゲームの進め方次第だけどね」


"再取得、再設定に成功しました。

最新13章の始めに戻ります"


「13章? 何だ、私と一緒ね。ということは、私と芹霞は本当に恋敵? あははは」


"対象キャラを再設定してください"


「え、こういうのって、先に指定するの?」


あたしの驚いた問いに、弥生は不思議そうに眼を細めてあたしを見た。


「私も初めて見るわ。やはりなんかデータに不具合でもあったのかな。あとで由香りんにメールして聞いてみる。……まあとりあえず、これ入れないと次に進めなさそうだから、「待てぃッッッ!!!」



あたしは――

"紫堂櫂"を押そうとする弥生を慌てて止めた。
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