ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
お前達の苦しさを判っていて、踏みにじって。
俺だけ幸せになろうとしている。
なんて非情なのかと思うけれど。
だけど――
芹霞は譲れないんだ。
例え今、どんな険悪な空気が漂おうとも。
ひとときの偽りだとしても、
"芹霞をやる"
それだけは死んでも言えない。
絶対に、言えない。
だから――。
俺は2人と本気で争うだろう。
"俺"という存在を賭けて。
きっとあいつらも、ひかない。
それ程に…恋焦れる先は――
「お前――…
何暢気に電話してんだよ!?」
俺は思わず芹霞に怒鳴った。
芹霞は繋がらない先に、何度も電話をしていた。
苛立った俺は芹霞から携帯を奪い去り、服のポケットにねじ込む。
「な、何すんのッ!!? 陽斗の声、ちゃんと聞くまで安心できないのよ!!」
ずきん、と胸が痛んだ。
顔が歪んでいくのが判る。
俺の知らぬ処で、勝手に強まった絆。
その理由を邪推してしまう故に。