ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「煌はそっち行ったし、桜ちゃんはあっち行ったし。玲くんは向こうでばりばりだし。櫂はさっきから何か深刻そうに考えてるし。
あたしは陽斗と連絡とるしか出来ないじゃん。
いいもん、玲くんに借りるから。
玲くんは優しいからね!!」
あかんべをして、俺の元から走り去ろうとする芹霞を見て、俺の中で何かが音を立てた。
イク…。
「――っ!!」
イッテシマウ…。
もし――
芹霞が俺の女であるならば。
俺はこんなに不安に思わなかっただろうか。
俺ではなく、違う男に走り行く芹霞を黙って見守れる程、今の俺は余裕がなかった。
芹霞が、"俺の女"なら。
俺が、"特別な男"なら。
幼馴染ではない――…
ただの"男"であったなら。