ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
だとすれば……。
…………。
………まさかね。
「ん? 勿論ばっちりだよ? 君とワンワンとの熱い熱い熱烈ちゅ……」
愉快そうに笑って言葉にする蒼生の口を、あたしは慌てて手で押さえた。
「な、ななななな」
玲くんの前で何を言うんだ、この男!!
玲くんは――
すたすたと正面の椅子に歩み寄り腰掛けると、キーボードを凄い速さで叩き出した。
画面の一部が、数字が流れる白黒の世界を映し出す。
凄い速さで数字が羅列し、下へとスクロールしている。
どうやら――
玲くんの耳には届いていなかったようだ。
あたしはほっとして蒼生の口から手を離した。
いかに煌がとち狂っていたとはいえ、あの思い出はあたしにとってはかなり羞恥のものだ。
今でも顔に火が出るほど、
あたしには刺激が強すぎるもので。
煌の熱さ。
煌の匂い。
煌の唇。
煌の舌。
思い返すたびに、リアルに煌の感触が蘇り、身体の奥が切なく疼いてくる。
あどけなく笑ういつもの煌ではない。
真剣な顔。
妖しげな色気。
まるで別人のように、ひたすら…異性というものを見せつけた。
抗えない…その強引さに、今でも身体が火照るんだ。
香水女にも――
そうなんだろうか。
香水女にも…
ああいう顔を見せるんだろうか。
そう思ったら、ぎりと胸が痛んだ。