ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
なかったことにしたかった。
煌がおかしかったのは明白な事実。
それなのに――
――謝らないから。
煌が――
全てではないにしても、大概を覚えているらしい煌がそれを拒んだ。
――本気だから。
真に受けてはいけない。
純情だったはずの性少年の口説き文句なんて、あてにはならない。
緋狭姉がよく言っていた。
寝物語は無効だと。
寝てはいないけれど、
あたしにとっては同じようなものだ。
第一、煌は煌で。
あたし達は昔から一緒にいる幼馴染。
煌は今までだって平気で香水女と遊んでいるし、あたしを恋愛対象にしているなんてありえない。
仮にそうであるならば、
普通の時に言うでしょう?
もしかすると、奴なりの責任なんだろうか。
軽んじてしまった幼馴染みのあたしが傷つかないよう、彼なりの不器用な優しさで、忘れがたい罪だと真摯に受け止め、流さないつもりなんだろうか。
………。
馬鹿な煌。
確かにあたしには刺激が強すぎたけど、あんたには平気なことかも知れないけど、そこまで考えなくてもいいのにね。
あたし、判っているのに。
あたし達には恋愛感情はない。
「……チャン」
だから、なかったことにしようよ、煌。
今まで通りでいようよ。
少し、照れてしまうのは許して?
「芹霞チャ~ン」
蒼生の声に正気に返る。
「そんなにぼう~ってする程、凄かったんだ。
ふうん? ワンワンは結構なテクを持っているんだね~。伊達に場数踏んでないか~。
――ということだって、レイクン。
あはははは~」
蒼生は大爆笑していた。
玲くんは――
「うるさいな。パスワード解除しないよ!?」
凄く怖かった。