ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


だめだ、だめだ、だめだ!!


なけなしの理性から警鐘が狂ったように鳴り響いた時、腰に固定されていた手が艶めかしく撫でるように動いた。


泣きたくなるくらい心地よい痺れに、思考を捨てて…ただ本能に身を任せそうになった時、



――芹霞ちゃあああん!!!



突如櫂が泣いた。


大声で泣いた。



あたしの可愛い櫂が

8年前の櫂が――


行かないでと泣いた。



「芹霞……

このまま……いい?」



熱に浮かされたような掠れた声。


ワンピースの背中のチャックが下がる気配。



――芹霞ちゃあああん!



相手があの玲くんだからという理由ではなく、


玲くんが正気じゃないとかそんなことは関係なく、


櫂を裏切りたくないその一心で。



あたしは――


視界の端に捉えていたボールペンを何とか気づかれないように手に取ると、



「――くぅっっっ!!」



思い切り、自分の太股に突き刺したんだ。


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