ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「芹霞!!?」
玲くんはあたしの行動にやっと正気に返ったようで、慌ててあたしの足からボールペンを抜き取った。
血がどくどく吹き出る感覚。
激痛に目がちかちかしてくる。
玲くんは明らかに血相を変え、自らの服を裂いて作った即席包帯で、あたしの太股の上部分をきつく締め上げ止血した。
「何てことすんだよ!!!」
その必死の表情は、あたしの知る紫堂玲で。
絞るように叫ぶその声は、あまりに強い語気で思わず縮こまったけれど。
それでも玲くんは玲くんで。
あたしの大好きな玲くんが戻ってきて。
安心。
そう――あたしは
喪失感が埋まって安心した。
あんな"男"の顔で、本能に流される玲くんは今まで知らない。
怖いくらい、玲くんを異性に感じた。
どきどきを感じたあの熱い時間は、心地よくもあり苦しい時で。
禁忌を犯しているような罪悪感で一杯だったから。
罪悪感――
――芹霞ちゃああん!
あたしの、一方的な櫂への罪悪感だけど。
あたしがもし玲くんを受け入れて、もし流されるにいいだけ流されていたら。
"櫂に拒まれたあたし"に穢れた玲くんを、櫂は拒むように思えて仕方がなくて。
拒まれるのはあたしだけでいい。
玲くんは、櫂の傍に居ないといけない人だ。
だから――
あたしは安堵したんだ。