ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「よかった……。
いつもの玲くんに戻った……」
玲くんは途端――
硬直したように動きを止めた。
「玲くんは……家族と同じくらい凄く大事な人なんだよ?」
端麗な顔が、今にも泣き出しそうな沈痛な翳りに覆われた。
それを見たあたしは無性に哀しくなる。
「玲くんがどんなに綺麗で優しく、女性としては羨ましい完璧な作法を身に付けていても、それでもあたしは玲くんを女性だと見たことはなかったよ?
あたし図に乗りすぎて……
玲くんの矜持を崩すことばかりしてきたんだね?」
慣れと親しみと尊敬と。
玲くんと接して穏やかな心地でいれたのはあたしだけで。
玲くんはそんなあたしに苛ついていたんだろう。
だから――あんなこと。
彼を惑わしたのが藤姫だったとしても、実際彼を壊したのはきっとあたしの態度だ。
玲くんは、あたしが思っている以上に男だったんだ。
「ごめんなさい」
あたしは玲くんに頭を下げた。
「今度からあたしもっとしっかりするから。玲くんに頼らなくてもいいように……」
あたしが弱いから。
あたしが愚鈍だから。
だから櫂だけではなく、
玲くんからも見放されるんだ。
「違うッッ!!!」
玲くんは悲痛な叫びを上げた。
「芹霞……僕は…
――君が……
…好きなんだ」
その端麗な顔はぞくりとする程真剣で。
真剣故に震えていて。
また、"男"の顔だった。