ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
やや癖のあるダークブラウンの髪。
理知的な雰囲気漂う、涼しげに整った顔。
眼鏡をかけた男子生徒が満足げな…いやいや悪魔の笑みを作って、こちらを見た。
眼鏡姿に偏見はないけれど、神経質という印象より、どこまでも底意地悪そうな性格を強調しているように思えて仕方がない。
「嫌なら、出て行くか?
大声出して呼んでやるぞ、女共を」
く~~ッッ!!!
此処は…言うことを聞くしかない。
そんなあたしの態度を悟った会長は、ドアを閉めた。
嫌な笑みをあたしに向けて。
桐夏には2つの科が存在する。
1つはあたしが居る、普通人を収容する"普通科"。
そしてもう1つは、ずば抜けて成績優秀な人達が集められた、選良(エリート)集団"特進科"。
その特進科の生徒達で構成される生徒会。
その頂点にいらっしゃるこの方は、日頃から用もないのにあたしを呼び出す暇人で、今日も校内放送や教師まで巻き込む伝言ゲームによる"お誘い"を受けたが、仮病を使って何度もかわしてきたはずだったのに。
最後の最後に会ってしまうとは…
神崎芹霞…不覚。
この生徒会長様は――…
あたしが一番嫌いな"上から目線"が酷く身についた方だ。
一緒に居て、腹立たしさ以外に感じられない、稀有なお人。
一体何をしたいのか判らず、あたしの気分だけを損ねさせるのに天才的な方だ。
いつもの通り、長く接触しないに限る。
これなら鬼ごっこしていた方が、余程気分爽快だ。
「助けて頂き有り難うございました。ではさようなら、ニカイドウ先輩」
すると、怒号が飛んできた。
「僕は……御階堂(みかいどう)だ!
いい加減に覚えろ」
些細なことに煩い先輩は、かなり不機嫌だ。