ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「あの由緒ある御階堂グループの血を引く、頭脳明晰、容姿端麗な生徒会長、御階堂充(みつる)様だ!きっちりと正確にその少ない脳みそに刻み込んだか!?」


声を荒げてすぐこれだ。

ご丁寧に毎回尊大な自己紹介をしてくれるが、こう斜め上から目線の俺様会長は好意が極端に削がれて仕方が無い。


だから、どうでもいい名前なんか記憶に定着しない。

決してあたしの頭が悪過ぎるわけではない…と思う。


どんなに由緒あっても分家の域で、どんなに頑張っても、どんなに女に騒がれても、あらゆるジャンルで決して1番にはなれない彼。


それは因果応報、自業自得。


簡単に言えば、彼は"残念な子"だ。



「……ちッ」


奇妙な静寂を破ったのは、忌々しげな先輩の舌打ちだった。


「随分と…言ってくれるじゃないか」


どうやらあたしは言葉にして呟いていたらしい。


「……口の利き方に気をつけろ。お前をこの学園から追い出すことだって出来るんだ」



古来より愚かな奴ほど、権力を誇示する。

だからそういう物言い、あたし嫌なんだってば。


あたしだけにこういう態度ならまだいい。


あたしが一番許せないのは――…


「庶民のお前はいつも、より優れた人間を理解できないようだ。あの下賤の……紫堂(しどう)如き屑の傍にいるお前の気が知れん」


あたしの大事な幼馴染を、いつもいつも愚弄すること。


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