ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「私が何故五皇になったかは伏せる。紅皇の立位置で、紫堂の監視と指南役に任命された私は、2つの過ちを犯した。

1つは、2つに分けた坊の守護石の1つを、元老院……藤姫の手に渡るのを止められなかったこと。

2つは、アオ管理下の制裁者(アリス)の実態を知らずにいたこと。

私がアオを止められなかったせいで、実験台にされた犠牲者は多くなった。

金もそう、煌……お前もだ」


哀しげな憂い湛えた眼差しを、褐色の瞳はじっと見つめている。


「自分の生を他人に支配される程、残酷なことはなかろう。欲しいものを欲しいと望む自由を、誰かが奪っていい訳がない。坊も、玲も、桜も、煌もそうだ。

耐えるために、お前達は此の世に生まれてきたのではない」


ああだから紅皇は――



「だから――

私は芹霞を使った」



泣いているような、

笑っているような複雑な表情。



「8年前は――

私が藤姫を諫(いさ)めたのが発端だ」



静かに語り始めた。





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