ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

 
「はあ!?」


素っ頓狂な声を上げたのは煌。


「俺だって見たことあるぞ、藤姫を。あれから10年も経ってねえじゃねえか」


「お前が見た時既に、齢100を超えていたのだ」


尚も声を上げる煌の横で、桜は厳しい顔のまま目だけくりくり動かして言う。


「不老不死……ですか?」


「に近いがそうではない。古い肉体を取替え生き続けてきたのだ。

意味は判るな、坊よ」


俺は思い至ったことを静かに言った。


「彼女とその父親は、緋影の者」


「正解だ」


緋狭さんはにやりと笑う。


「男は魅惑的な容貌を持つ娘を犠牲に、己のみの保護を求めた。

当然その他諸々、共に歴史の影で迫害され続けてきた異能力者達は憤慨し、男を殺してしまった。そして暴動になりかねないのを制したのは、紫堂……坊の先代だ。彼は皆に代って元老院に願い出て、異能力者全員の保護を求めた。その見返りは、緋影の身体と紫堂の異能力。

藤姫が条件を受け入れた。

彼女が望む完全な不老不死と、飽くことない力に――元老院は振り回され続けたことになる。

厳しい訓練を積んだ五皇も、元々は紫堂の遠縁にあたる。ただ紫堂は烏合の衆の総称だから、実際私や芹霞と坊が血が繋がっているかどうかは判らん」


紅皇は淡々と言った。


< 811 / 974 >

この作品をシェア

pagetop