ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「何で、東京を崩壊させたいんだろ?」
またもや煌は頭を捻ると、緋狭様が言った。
「大都市として完璧な機能をしているからだ。完璧だから壊したくなったのだろう。坊という存在も同じく。
東京という土地さえ、藤姫の玩具だ。そして破壊したのちは制裁者(アリス)を作り、また破壊させる。ご苦労なことだ」
「最低女」
煌が忌々しげに吐き捨てた。
「そんなのの身体になった、篠山亜利栖が気の毒だぜ……」
「ふふふ、確かにな。緋影の生き残りの少女でなければ違った運命を辿れただろうに。
彼女は処女ではなかったが脳の劣化を防ぐ為に、アオ経由で元老院に騙して連れられ、弟の充と引き合わせる条件を勝手に破棄され、頭をこじ開けられ、藤姫のものと挿(す)げ替えられた」
篠山亜利栖は何を思ったろう。
それでなくとも愛する男に捨てられ、その友達に輪姦され。
非現実的なものに救いを求めるも、同級生にはいじめられ。
唯一の肉親に会えた時、それは完全な自分ではなく。
もし心というものが脳に宿っているというのなら。
弟との再会は他人じみたものだったろうし、もし心が身体に宿るというのなら、その感動を他人の脳は言葉として、感情として表現出来たのだろうか。
身体の中にある異物。
意識の混濁。
自分を"自分"と認識出来たのだろうか。