ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


それでも揺るぎない俺の態度に苛立ったのだろうか、更に親父に言われた。


『そこまで自信があるのなら、あの娘の心を手に入れてみよ。お前からは何一つ手を出してはならぬ。娘が自ずから振り向くような男になると、約束出来るか。もしもそれさえも出来ぬというのなら、お前に紫堂は任せない。即ち次期当主は剥奪し、よって娘から石を取り出す』


心を手に入れる。


それは8年前の芹霞との関係ではないことは判った。


それは俺が求めていた"男"の心情で、"王子"の立場に他ならない。


どうすれば王子になれる?


俺の出した答えは単純明快だ。


"姫"であった8年前の姿と真逆になれば、"王子"になれる。


加えて8年前の悪夢に芹霞を触れさせぬ為、8年前の出来事は夢幻と錯覚させてしまえばいい。


真逆になれば、簡単に芹霞を手に入れられると思っていた。



だが真逆になっても芹霞の心は手に入らず、親父の言葉は枷となり呪いの言葉となり、俺は芹霞に手出しすることを制され、ただ"姫"の目覚めをずっと待っているだけ。


あの言葉がなければ、ここまで俺は自分の不甲斐なさに煩悶せずともよかっただろう。


俺は本来、我慢症ではないから。


即結果を出す為の策を練るタイプだ。


親父が俺に対し好意的ではないことは判っている。


第三者的には簡単なことにも思えるだろうが、芹霞は複雑な心を抱いている女だ。

しかも紅皇の妹。


一筋縄にいかないことは、俺より親父の方が見抜いていた。


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