ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


日蝕が起きる。


静かに…

太陽と月が重なり合った。


間近で初めて見たそれは、神秘的な現象で。


闘いを忘れて、俺は呆然とした心地で空を眺めた。


すると、緋狭さんの舌打ちの声が聞こえたんだ。



「あの馬鹿が……」



俺は、一方向を睨み付ける緋狭さんを見つめた。



「私が居るのに…玲…!!!」



玲?


玲が、どうしたんだ?


「坊。すぐそこの……市ヶ谷駐屯地に芹霞と玲は居る。いいか、出来るだけ早く、玲を私の元に寄越せ」


「え?」


「結界力なら私が上だ。少なくとも守れる」


「玲が……どうしたんですか?」


そう聞いた時だ。


身体全身が本能的に警告を発した。


ざわめく群衆の気配。


凶々しい気がうねり、1つとなって俺達を包む。


「……ちッ!」


煌が厳しい顔をして、顕現した偃月刀を握り直す。


桜は無表情のまま、糸を絡ませた指を臨戦態勢の形にして構える。



血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の大群に四方を取り囲まれていた。


共食いしている姿も見られるが、その数は減じられない。



此処に――


一同が集結したのか。


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