ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


以前の比ではない。

数も凶々しさも。


市ヶ谷駐屯地はすぐそこなのに、

ここから望めるのに、行き着けない。


まるで…眠り姫に会いに行こうとするのを邪魔する、いばらのようだ。


煌が飛び出した処で、戦闘は開始された。


視界は真紅色となる。


飛び散る……

血色の薔薇の痣(ブラッティ・ローズ)化した屍の肉片。


乱れ散る断末魔の叫び。

生臭い鉄の異臭。


理性を無くした血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の目には、今までのような虚無ではなく、確かな凶気だけがくっきりと宿り、そこには人間性の欠片など微塵も見られない。


完全に、別のものと成りはてている。



見える。


標的は――俺だ。


数千といる敵が、俺を狙っている。


宙に光る緑色の光。


どんなに蹴散らしても…

芹霞へと続く道が拓かない。



すぐそこなのに。

芹霞はすぐそこなのに。


胸を圧迫する重圧が、激しさを増す。



早く、行きたいのに!!



その時――



「!!!?」


赤の閃光が空に奔ったんだ。


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