ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「僕は……」
玲くんは、消えて無くなりそう程に…儚げに笑った。
「僕は昔の君を知らない。事情は知っていたけど、僕が欲しいのは今の君だ。
君がどうであれ、僕にとって君という存在が真実だ」
儚げながらも、強い光を宿す鳶色の瞳。
その真剣さ故に――
「君が生きていようと死んでいようと関係ない。
もし君が闇に還るというのなら、
――…僕も一緒に還るよ」
玲くんは…判っているんだ。
あたしが…こちら側に居てはいけないと思っていること。
優しいね、本当に玲くんは優しい。
「僕は……
"僕"は、それを強く望む」
そらすことができない程、鳶色の瞳は真っ直ぐで。
冗談でもなく、偽りでもなく。
それが真情だということを…
あたしに、信じさせてくれるなんて。
綺麗な玲くん。
優しい玲くん。
限りない優しさを――
「どうもありがとう…」
ありがとう。
こんなあたしを欲してくれて。
「あはははははは!
じゃあ一緒に逝けよ、気高き獅子の守護力が弱まり、血染め石さえ手に入れば、骸は必要ない。
日蝕が――始まるよ?」
蒼生が笑いながら大画面に近づき、机の上の何かのボタンを押したんだ。