ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

『いちいち妬くな、馬鹿犬ッ!!! お前が私の石を手にしているから、私は遠隔操作が可能だ。無論、今の持ち主であるお前の心にも入り込める。

全く。簡単に邪眼を蘇生して暴走し、芹霞ばかり求めるものだから、私の声も聞こうともせず、結果芹霞を使って邪眼を消すしかお前を止める手立がなかっ……おい! 私の言葉の一体何処が、芹霞との濃厚場面を思い返す契機になる。お前の頭の中はそればかりか、この発情犬がッ!!

私の守護石を櫂の守護に活用できないかなど、もっと建設的に頭を働かせんか』


『か、活用!?』


『はあ。やはりな。思いつきもせなんだか。いいかお前の太陽石を扱うように、私の石に気を巡らせよ。私が許可しているのだから、紅石がお前を弾くことはまずあるまい』


『……こんな感じ、か?』


『細かいことを言えば、何を今まで学習していたのかと怒鳴りたい気分だが、今は堪えてやる。良いか、そのまま"炎"の様を思い浮かべよ』


『炎?』


『ああ、めらめらでもぼうぼうでも何でもよい。思い浮かべたらそれに自分自身を投射させ、炎と一体化せよ』


その通りにしてみた俺は、



「火弓ッ!!!」



自然と声が出て、俺の手は、真上の空に弓を引くような動きを作っていた。


そして、弓矢を放つような動きをした右手から、突如炎が発射され、そしてその炎は凄い勢いで四方八方に飛び散り、瞬時に血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を焼き尽くした。


目の前には焼け野原。


俺が望んだ、大量瞬殺。


俺はただ呆然とするばかりで。



「炎……緋狭さんの力……媒介はその腕環、か。嵌め込まれた紅石に波動…。ああ、緋狭さんの石の…一部なのか」



心で会話してたことなど知らねえくせに、櫂はすんなりと事態を飲み込めたようだ。


何で判るんだ、櫂。


俺はさっぱり判らねえ。


『坊は聡い。お前とは違う。よいか、馬鹿犬。その力に驕るなよ? 坊を護る力とせよ。その為にお前に託したのだから』


そう言うと、一方的に始まった心の会話は、一方的に終わってしまった。


もう何の返答もねえ。

ま、いつものことだけどよ。

< 886 / 974 >

この作品をシェア

pagetop