ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
俺はその間、勢い余った玲を受け止める。
玲の顔には、気味悪い程色味がなかった。
ないのに、玲の輪郭を曖昧にさせる輝きだけは増すばかりで。
何だか玲が揺らいで消えてしまいそうで。
酷く苦しそうな息をしているのに、苦しそうな顔をしていない玲は、それを苦しいとも思えなくなってしまう程、彼の限界を超えているような気がして。
「芹霞を……闇から……」
玲から漏れた呟き。
お前――
芹霞の命の要である闇石が奪われない為に、持ち主の櫂を護っていたのか?
よくみると、鳶色の瞳は焦点があっていねえんだ。
こいつ……意識飛んでねえか?
大体いつもの玲なら。
芹霞の為に櫂を護るなんて、お前の立場上本末転倒だろ?
光が――
玲の輪郭を薄くしていく。
やべえ!!
――回復させろッ!!
腕輪に意識を通し、回復を願う。
でも――変化はなく。
玲の手の中の月長石を奪い、
その力に意識を絡めてみても同様で。
やっぱり……。
俺はがくっと項垂れた。
櫂、実は……。
攻撃専門の俺は…
"回復"方法なんて知らねえんだ。