ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


俺はその間、勢い余った玲を受け止める。


玲の顔には、気味悪い程色味がなかった。


ないのに、玲の輪郭を曖昧にさせる輝きだけは増すばかりで。


何だか玲が揺らいで消えてしまいそうで。


酷く苦しそうな息をしているのに、苦しそうな顔をしていない玲は、それを苦しいとも思えなくなってしまう程、彼の限界を超えているような気がして。


「芹霞を……闇から……」



玲から漏れた呟き。


お前――


芹霞の命の要である闇石が奪われない為に、持ち主の櫂を護っていたのか?


よくみると、鳶色の瞳は焦点があっていねえんだ。


こいつ……意識飛んでねえか?


大体いつもの玲なら。


芹霞の為に櫂を護るなんて、お前の立場上本末転倒だろ?


光が――

玲の輪郭を薄くしていく。



やべえ!!



――回復させろッ!!



腕輪に意識を通し、回復を願う。



でも――変化はなく。


玲の手の中の月長石を奪い、

その力に意識を絡めてみても同様で。



やっぱり……。



俺はがくっと項垂れた。




櫂、実は……。



攻撃専門の俺は…

"回復"方法なんて知らねえんだ。


< 898 / 974 >

この作品をシェア

pagetop