ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「馬鹿、玲!! お前その光消せッ!!」
俺の叫びを上書きするかのように振り下ろされた氷皇の足を、玲はにっこり微笑んで素早く片手で横に払うと同時に、身体を捻って反対に自分の足を氷皇の首筋に食らわせた。
光彩を放って繰り広げられる玲の動きは、うっとりとする程綺麗で鮮やかで。
残光の軌跡は緩やかに、同時に鋭く速度を増して。
それでも紙一重でそれをかわした氷皇の移動地点には、それを見越したかのように既に玲の電気が向けられ、投網のように光が膨大しながら氷皇に襲い掛かった。
直前、氷皇は空間に指先で何かを描くと、手から発した衝撃波を瞬時拡大して玲の力を受け止め、そして横に払った。
払われた力は地面を奔り、遥か向こうで派手に何かにぶつかる音がする。
くつくつ、
「……散る華は美しい、か。ますます輝くその意味が判ってる? いいねえ、その輝きを最高潮にして、俺の相手をしてよ?」
くつくつ。
嬉しそうな氷皇の声に俺ははっとする。
それは櫂も同じだったようで。
――ますます輝くその意味が判ってる?
命を媒介にして光っているのであれば。
光り輝くほど、命の消耗は激しいということで。
氷皇が動く気配。
「煌、玲を回復させろッ!!」
そう叫んだ櫂は――
玲の手を掴んで俺に乱暴に投げ寄越した。
玲に代って櫂は、氷皇の振り上げられた足を交差させた両手で受け止め、相殺に行き場をなくした力は、2人を取り巻くように真上に抜けた。