ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



ゴゴゴゴゴ…。



その時、地鳴りがして地面がぐらついた。


揺れが落ち着いた頃、建物内は瓦礫に塗(まみ)れ、ガラクタの藻屑となっていた。


上階ごとコンクリートが崩れ落ちてくる。


私達は結界を張り、その衝撃を防いだ。


天井を見上げれば、赤色の空。


もう建物として一切の機能を果たしていない。


櫂様達の気も、上階からどこか横の方へずれていったようだ。


多分――落されたのだ。


「……緋狭様、桜は何だか嫌な予感がします」


そう告げると、


「ああ。予感ではなく…

最悪事態に陥るだろう」


緋狭様の顔は固かった。


「今――

また呪詛の変更がなされた。

坊から玲に、玲から……」


そう言いかけた時、緋狭様は舌打ちをした。


「だから早く玲を連れろと……。あの馬鹿犬、嫉妬に狂って…またこちらからの応答に出ぬわ。桜、行くぞ。ついてこい」


玲様?

玲様の身に何か?


不安だけは大きくなり、

私は緋狭様の後を追った。


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