ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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目の前に、馬鹿蜜柑と玲様が居る。


ようやく…煌は玲様を連れて来たのだ。


玲様の生体反応はあまりに薄くて、私は必死に祈った。


神ではなく――

回復をさせている緋狭様に。


やはり昔と変わらず馬鹿蜜柑は、武芸の基本中の基本である治癒…"回復"が出来ず、更にこの場的には意味ない"結界"に包んで玲様を連れてきた。


櫂様は珍しくも、あの陽斗が護っているようだ。



では……


「芹霞さんは?」


「こっちの方が生死に関わって緊急性があったんだよ。芹霞にはとりあえず櫂も陽斗もいるし――。

こっちすんだら行くって約束して…じゃ俺……って!!! だから!!! 離せよ、緋狭姉ッ!!!」


玲様の月長石を操り、玲様を依然櫂様にしたのと同じような赤い球に包み込みだ後、緋狭様の片手は煌の襟首を掴んで離さない。


「緋狭姉だって、芹霞を連れろって言ってたろ!!?」


「……状況が変わってしまった。


もう――間に合わぬ」



「あ!?」


「それに、お前如きが今更行っても、何も変わらん」


「~~ッッ!!!」


「芹霞の意思は何一つ変えられん」


ぴたり、煌の動きが止まる。


「……芹霞の意思って何だよ?」


何か思い至る処でもあるのだろうか。


それとも、私と同じような不吉な予感を感じたのだろうか。


そう、深い翳りに覆われた緋狭様の顔に。



「守護石というものは、遠隔的に力を操るのと、直に触れて操るのとでは格段にその大きさが違う。


尚も坊は、石の力全てで芹霞の命保持に努め、力の全解放など出来ない状態だ」


何を――

言い始めたのだろう。


嫌な予感だけが膨れあがる。


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